テロワールを追求したウイスキーブルックラディ

f:id:thewhiskyfreaks:20211203104150j:plain テロワール(Terroir)という言葉をご存知でしょうか?

テロワールは主にワインで使われる言葉で土壌、気候、標高、など自然環境要因を意味しています。

同じぶどうの種類でも土壌によって異なる味のワインができあがり、その違いを個性として良いものとして捉えています。

広義の意味ではその土地で採れたぶどうでワインを作る事も含まれています。

ウイスキーは大麦や穀物を原料としていますが、スコットランドの法律において蒸留さえ国内ですれば「スコッチウイスキー」と名乗ることができます。

そのため原料は海外から輸入された大麦や穀物を利用するもでき、純国産であるウイスキーは殆どありません。

日本も例外ではなく海外から原料を輸入しており国内で蒸留している蒸留所もあります。

日本では近年それらの概念をより厳しく定義する動きがあります。

ブルックラディはテロワールに挑戦したウイスキー

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ブルックラディの蒸留所はアイラ島にあり1881年に始めて操業が開始されたものの1933年に一度閉鎖され、個人投資家により2001年に操業を再開しました。

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アイラ島と言えば、ボウモア、ラフロイグ、アードベッグなど有名な蒸留所が軒を並べており、ブルックラディの蒸留責任者として15歳からボウモアで働いていたジム・マキューアンが担当しています。

ブルックラディはテロワールを追求し、原料である大麦(モルト)、水、製造方法全てをアイラ島100%で完結することを目標としています。

実はアイラ島は大麦の生産には向いていないとされており、アイラ島の大麦を生産している農家は数軒でそれを利用しているのはキルホーマンのみで、それも100%アイラ島の大麦ではありません。

そのため、ブルックラディは地元農家と協力しウイスキーに利用する大麦の生産から始めることになります。

蒸留所が大麦から作ることは異例であり、ブルックラディのテロワールへの熱意が伺えます。

ブルックラディの考えるテロワールは4つに分けられます。

1.大麦の生産と種類

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ブルックラディはアイラ島で大麦(モルト)を生産するだけでなく、どの種類のモルトがウイスキーに適しているのか調べることから着手しました。

モルトには古代米を含めスコットランドの伝統的なモルトの歴史調査、最適な気候や土壌にまで及び、そしてそれぞれのモルトに対してウイスキーを作りを行い研究しました。

そして、その中から厳選されたモルトのみを使いブルックラディのウイスキーは生産されています。

2.熟成年数の常識を変える

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ウイスキーは熟成年数が高くなるほど「良いウイスキー」であるという一般的な概念があります。

しかしウイスキーの品質や美味しさは熟成年数だけで評価できず、若いウイスキーには新鮮なモルトとライトな甘さを感じやすく、熟成年数が高いウイスキーは樽の個性が強くなります。

ブルックラディはそれぞれの熟成年数の良さを最大限に取り入れるため、若いウイスキーも利用します。 これは簡単な事ではなくスコッチの法規制では一番若いウイスキーの年数表記をする必要があります。

これは年数表記の無いウイスキーは安いという既成概念を乗り越えなくてならずブルックラディにとっては不都合な真実でしたが、テノワールを尊重した美味しいウイスキーを作る事に一貫してると言えます。

3.樽を厳選

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ウイスキーの味付けとして重要な要素である樽は密造酒の時代からオーク樽が利用されていました。

オーク樽を使うことはスコッチでは法律上必須な条件となっています。

ブルックラディでは主にアメリカ産のバーボン樽を利用しシリーズ毎に樽を厳選しています。 アメリカ産のバーボン樽といっても品質は様々で、入荷した樽をブルックラディに合うように一度解体したり、再度トースティング(焼付)を行っています。

樽の厳選や再構築は決して珍しいことではないのですが、ブルックラディの特徴は生産されたボトル毎にどの樽を使っているのか公開している事にあります。

シリーズごとに樽が異なり、樽のレシピはブルックラディのボトルにシリアルが記載されておりWebページで入力するとレシピを見ることができます。

ここにもブルックラディが誠実にウイスキー作り向き合った姿勢が伺えます。

www.bruichladdich.com

4.ありのままを表現するのがブルックラディ

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大麦の生産や種類のこだわりだけでなく、手作業、無濾過(ノンチルフィルタード)、無着色、加水もアイラ島の水を利用しテロワールを表現しています。

ブルックラディは一度操業を停止しましたが、同時の機材を今も使い続けており作業は殆ど自動化されていません。

熟成されたウイスキーにはオリ(浮遊物や沈殿物)が多くなりますが、その中には旨味も含まれており濾過する事でオリと同時に旨味も失われることが無いように無濾過で生産しています。

ブルックラディで作られるウイスキー

さて、ブルックラディの精神はここまでにしてブルックラディのウイスキーを紹介しましょう。

ブルックラディ蒸留所では3つのウイスキーと1つのジンが作られています。

ブルックラディ

クラシックラディ

クラシックラディには決まったレシピはなく、その都度利用するモルト、樽の個性を感じる事に重きを置いています。 購入したクラシックラディのレシピはシリアルを入力するとレシピを知ることができます。

www.bruichladdich.com

ノンピートでモルトの新鮮さを感じ、フローラルで優しい味わいです。

アイラバーレイ 2011

アイラバーレイはアイラ島の6つ農場で栽培されたモルトを利用しています。 ノンピートでフローラル、フルーティ、モルトをしっかり感じ、後味はほのかにバニラの香りが続きます。

アイラバーレイ 2012

アイラバーレイはアイラ島の8つ農場で栽培されたモルトを利用しています。

ベアバーレイ 2011

モルトの中でも収穫量の少ない伝統的なベアバーレイを利用しています。ベアバーレイは収穫されておらず、ブルックラディが復活させたモルトです。 2011はアイラ島のモルト6種類を使っています。 ベアバーレイはモルト特有な優しい甘さ、はちみつのような香りが優しく広がります。

ポートシャーロット 10年

ポートシャーロットはブルックラディの精神を引き継ぎ作られています。 味わいはブルックラディと打って変わり、しっかりピートを感じ、潮味、はちみつのような甘さ、コクがあります。

ポートシャーロット アイラバーレイ

アイラバーレイはポートシャーロット 10年よりもさらに、ピートを強く感じ、潮味、フローラル、柑橘系のフルーツが広がります。はちみつのような甘さや、コクはほとんど感じませんでした。

オクトモア 12.1

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オクトモアは最強のピートウイスキーと言われており、ピートの強さを示すPPMがなんとアードベッグの倍以上である100以上になります。

味わいは非常に強いピート、潮味、モルト、ケーキ、柑橘系などピーティな中に非常に複雑な味わいがあります。最強のピートを試したい方は是非飲んでみてください。

まとめ

ブルックラディの蒸留所ではボタニストという日本でも人気の高いジンも作られています。 非常にフローラルでジンが苦手な方もソーダ割りなどで美味しくいただけると思います。

ザ・ボタニスト [ ジン 700ml ]

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ブルックラディに限らずウイスキーには密造酒の時代から地域固有の特性に合わせて作られています。

その中でもアイルランドを愛し、徹底した100%アイルランドを追求し続けている蒸留所はほとんどありません。

このような歴史的背景や操業方法などを知るのもウイスキーの楽しみの1つですね。